UGOKU magazine
UGOKU magazine

「うごくことを肯定し、ちょっとだけ心を軽くする」ためのローカル・カルチャー・マガジン

発行:2022年3月19日

プロジェクトの概要

日本初、屋内・屋外にバスケットコートがあるスポーツ施設として、2019年11月にBRANCH大津京内にオープンしたSG-Park人生の中で運動を習慣化することを目指して、スポーツとは「気を晴らすもの」を合言葉に子供向けのスポーツクラブや、スペースのレンタルなど滋賀県を中心とした地域住民に向け様々な事業を行っています。

 

SG-Parkが「新しいサービスとして、全年齢を対象とした運動クラブをはじめること」をきっかけに、ユーザーの裾野を広げ、また関係を深めるためのコミュニケーションツールとなるカルチャーマガジン、ランディングページの制作を担当しました。

 

 

プロジェクト実施の背景

最初の問い合わせではSG-Parkのオーナーである牧さんに「フライヤーを作って欲しい」という相談をいただきました。

 

その後、まずはじめに行ったのはヒアリングです。SG-Parkのミッションは「滋賀の方の健康寿命を伸ばし、生きている間をいかに自分らしく生きていくかをサポートすること。しかし、今スポーツを習慣にしていない人にとって、スポーツクラブに通い続けることは大変です。それが子育てや、仕事に責任を持ち始める30代や40代になればなおのこと。そういった方が、スポーツクラブに足を運び、また継続するためにはどのようなサービスが必要だろうか?今回、新しく始める大人向けのスポーツクラブは、そんなきっかけをつくるために始まったと牧さんから伺いました。

 

そんなコンセプトを聞いているうちに、必要なのはフライヤーではなく、「繰り返し読むことができる、家においておきたくなる読み物なのではないか」ということを感じました。

 

まずはSG-Parkや運動そのものに興味を持ってもらうこと、そして興味を持ったタイミングで身近に身体を動かせる場所があると思い出せること。長い目で運動に関わるためのサービスを提供するSG-Parkだからこそ、「運動がしたくなったタイミングで参加できる」ようなコミュニケーションツールが必要です。そのような結論から、今回はローカルカルチャーマガジンという形を取り、紙ものの制作を行うことを決定しました。

 

また牧さん自身が、普段見ている・考えていること、SG-Parkで目指すもの、触れている環境、そして滋賀という場所、それらを重ねあわせて表現できる媒体としても、マガジンという形式は適していると判断。提案を行いました。

制作のコンセプト

今回はマガジンの全体コンセプトの企画から、ライターの土門蘭さん、京都でグラフィックデザイン・写真の事務所をされているNeki inc.さんと一緒に進めていきました。

 

まずはマガジンのテーマをどうするか、堤を含めた3者で「運動」や「スポーツ」にまつわることを自身の体験を含め話し合います。最終的にたどり着いたテーマは、「運動」や「スポーツ」の一つ前の段階である「動く」という部分でした。

 

SG-Parkの目的は生活の中に運動を取り入れること、そして続けていくことです。自身の学生時代を振り返ると、体育の時間はいつも憂鬱。失敗して笑われたり、負けてばかりで楽しくない、みなさんもそんな経験はないでしょうか。その記憶が残ったままでは、「運動そのもの」への気持ちのハードルが上がってしまう人が多いのではないかと感じました。

 

今回、制作を行うマガジンではそのハードルを取り払いたい。日常的に取り入れる運動には優劣や競争は必要ありません。

 

「体動かすって気持ちいい」、「これでもいいんだ」、「自分でもできるかも」、そして何より「楽しい!」そう思ってもらうことが続けることには重要です。また、「動く」というテーマは「体が動く」はもちろん、「気持ちが動く」、「地域が動く」など、「スポーツ以外」にも転用できる見方です。閉じられた専門誌ではなく、地域に根ざした包括的なSG-Parkの取り組みを体現できるよう、より多くの分野、業界の方を巻き込むことができることを目指しました。

PROCESS(制作のプロセス)

制作を進める際にまず行ったのは、マガジンの立ち位置を決めることです。

 

堤、土門さん、坂田さんの3者で200冊にもなる雑誌を持ち寄り、世の中でつくられている紙もののポジションニングをマップ化し、可視化を行いながら、「SG-Parkではどのようなマガジンを目指すのか?」を話し合いました。

 

まず、大きく”専門的/大衆的”と、”趣味的/情報的”に分類。読者のスポーツへのハードルを下げたいため、「今回は専門的な方向性はなし」と3人の認識をそろえます。また情報を並べるのでは、スポーツを習慣にしていない人に興味を持ってもらうことは難しいと判断し、この方向も要素を減らすことに。上記より、今回のマガジンで目指すのは、「大衆的で趣味的」であること。

 

滋賀県という立地、子育て世代というターゲットを考え、洗練されすぎず、読者との距離感を近くすることもポイントの一つ。専門性は高くせず、興味がない人でも関係性が作れるよう間口を広げておくことは常に共通認識として制作を進めました。

成果物

『UGOKU magazine』

「うごくことを肯定し、ちょっとだけ心を軽くする」ためのローカル・カルチャー・マガジン。

滋賀県を中心に大小様々な「うごいている人・もの・場所」を見つけ、「○○×うごく」を切り口に「うごく」とはどういうことなのかを探求します。

「体がうごく」と「何かがうごく」。この雑誌を通じ、一人ひとりの中にある「うごくこと」へのハードルを下げることで、主体性や能動性を持った地域社会になっていくことを願って。

 

創刊号のテーマは “気持ちがうごく”。

 

特集として、SG-Parkの代表取締役・牧貴士さんや、滋賀の甲賀で長い期間場づくりを行ってきたマンマ・ミーア!さんに加え、大津在住の最年少プロウェイクボーダーのRen Nishikawaくんへインタビューを実施。

 

その他、人類学者の磯野真穂さんや、あかつき写房の小椋雄太さん、京都の鍼灸院・お灸堂の鋤柄誉啓さんの少し違った角度ででの読み物の充実、そして近隣の小中高生に聞いた「気持ちのうごかしかた」の取材や、お家でできるぷちエクササイズの紹介、塚田雄太さんの漫画、写真家・成田舞さんが見た滋賀のスナップ写真などを一冊にまとめることで、雑誌的な面白さを同時に追求しています。

 

SG-Parkが目指すのは、先の世代につながる地域社会のデザインです。あくまで「スポーツクラブ」はそれを実現させるための一つの手段。『UGOKU MAGAZINE』を読んだ人が、新しい一歩を踏み出し、新しい関係性を築くきっかけになることを願います。

CREDIT(クレジット)

【発行】SG-Park
【制作】Eat,Play,Sleep inc.
【企画】堤大樹(Eat,Play,Sleep inc.)、土門蘭、坂田佐武郎(Neki inc.)
【編集】堤大樹(Eat,Play,Sleep inc.)
【執筆】土門蘭、太田明日香
【撮影】成田舞(Neki inc.)、吉田亮人、岡安いつ美(Eat,Play,Sleep inc.)
【表紙写真】成田舞(Neki inc.)
【アートディレクション・デザイン】坂田佐武郎(Neki inc.)、桶川真由子(Neki inc.)
【イラスト】カワグチ タクヤ、水野朋子、megumi yamazaki